君とシャボンと金鳳花
シャボン玉が、揺れる。
ふわりふわりと漂いながら、僕の前を通過する。
君は、シャボンのような人だった。
溢れる緑、白と青の空。
緑を彩る黄色い花−名前は思い出せないが。
こんな風景を、前にも見たことがある気がする。
でも、実際にそんなことはなかったような気もする。
−そうそれはきっと、デジャヴ。
シャボン玉に、僕の顔が映る。
それが一瞬君の顔に見えて、僕は思わず手を伸ばした。
シャボン玉が弾けた。
それは当たり前のことなのだけれど、僕はひどく落ち込んだ。
そして、後悔した。
いつもいつも、何をしても後悔だけが残っているような気がする。
昨日も今日も、明日も。
シャボン玉にまた僕の顔が映る。
その顔はひどく暗くて、僕はもうそのことは考えないようにしようと、緑の地面を見た。
小さくて可愛らしい花。
一つちぎって、じっくりと眺めてみる。
−そこで、この花の名前を思い出した。
この花の名前は−金鳳花(きんぽうげ)。
僕は、金鳳花のような人になりたかった。
そうできていたら、今、このシャボン玉に映っているのは−
君だったかもしれない。
シャボン玉が揺れていた。
金鳳花も揺れていた。
僕はこの景色を、胸の奥にしまい込む。
そうやって忘れようとするのが僕の悪い癖だと、君がよく言っていたのだけれど。
end.
[ 1/3 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]