君とシャボンと金鳳花

シャボン玉が、揺れる。
ふわりふわりと漂いながら、僕の前を通過する。

君は、シャボンのような人だった。

溢れる緑、白と青の空。
緑を彩る黄色い花−名前は思い出せないが。
こんな風景を、前にも見たことがある気がする。
でも、実際にそんなことはなかったような気もする。
−そうそれはきっと、デジャヴ。

シャボン玉に、僕の顔が映る。
それが一瞬君の顔に見えて、僕は思わず手を伸ばした。

シャボン玉が弾けた。
それは当たり前のことなのだけれど、僕はひどく落ち込んだ。
そして、後悔した。
いつもいつも、何をしても後悔だけが残っているような気がする。
昨日も今日も、明日も。

シャボン玉にまた僕の顔が映る。
その顔はひどく暗くて、僕はもうそのことは考えないようにしようと、緑の地面を見た。
小さくて可愛らしい花。
一つちぎって、じっくりと眺めてみる。
−そこで、この花の名前を思い出した。
この花の名前は−金鳳花(きんぽうげ)。

僕は、金鳳花のような人になりたかった。

そうできていたら、今、このシャボン玉に映っているのは−

君だったかもしれない。

シャボン玉が揺れていた。
金鳳花も揺れていた。

僕はこの景色を、胸の奥にしまい込む。

そうやって忘れようとするのが僕の悪い癖だと、君がよく言っていたのだけれど。


end.

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