キスだけじゃ、もう足りない
マリンがベッドから立ち上がろうとすると
パシリと腕を掴まれて後ろへ引かれた。

マリンの身体は
ゆっくりと後ろへ倒れていったが、
すぐに暖かい温もりがマリンを抱きとめ、
そのままマリンの身体は包み込まれた。


『へっ…!?』



何が起こったか最初は
分からなかったマリンだが
後ろを振り向くと、
我愛羅に抱きしめられてる事に気付いた。

『えっ…我愛羅…?え?』

「…俺が悪かった、マリン。
お前が謝る必要は全くない。
怖い思いをさせて、本当にすまなかった。」

『…い、いつの間に、起きてたの?』

「…実は、ずっと起きていた。」

『なっ…』

マリンは、顔を赤くして固まった。

我愛羅はマリンの目元に溜まった
涙を拭うと、瞼にそっとキスを落とした。

「さっきは俺の醜い嫉妬心で
お前に酷い事をした。
本当に後悔している。すまなかった。
もう、お前の嫌がる事は二度としない。
約束する。」

『我愛羅…』

「だから…どうか、今日はこのまま
ずっと俺の傍にいてくれ。」

と呟きながら
悲願する様な瞳をむける我愛羅の頬を
マリンは優しく撫でながら頷くと、
我愛羅の額の「愛」の字にキスを落とした。

「っ… /// 」

マリンの行為に顔を赤くした我愛羅は
マリンの後頭部を掴むと、
ゆっくりと引き寄せて唇を塞いだ。

『んっ…』

我愛羅の頬から離れて
宙をさまようマリンの手を
我愛羅の手が絡み取った。

次々に落とされる我愛羅からの
優しいキスにマリンは
うっとりと表情を蕩けさせた。


やがて、キスに夢中になったマリンは
無意識のうちに、自分の体重を支えている肘の力を抜いてしまった。

『っ!!』

「!!」

マリンは肘から崩れ落ち、ベッドに
仰向けになった。

マリンの手を握っていた我愛羅は
引っ張られる形で自然と
マリンに覆い被さった状態となった。

やがて至近距離で二人の目が合い、
我愛羅の瞳が微かに揺れた。

「っ……。」

しかし我愛羅は
何かを必死に抑えるように歯を食いしばり、
マリンから目を逸らすと
腕に力を入れ、
すぐさまマリンから離れようとした。


(我愛羅くん、絶対我慢してるよ)


マリンの頭に
いつかのサクラの言葉が過ぎった。

マリンは咄嗟に
離れていく我愛羅の袖をきゅっと掴んだ。

「…マリン?」

『………………じゃ、ない…』

「??」

『…私、嫌じゃない。』

「な、にが…」

『我愛羅と、キスより先…したいよ。』

「っ……!!!!」

我愛羅は顔を真っ赤にして
目を見開き固まった。

何も言わない我愛羅に気付いた
マリンは、慌てて口を開いた。

『あっ…いや、その!!』

真っ赤な顔でモゴモゴ口を動かすマリンを
我愛羅はそっと抱きしめ、優しく頭を撫でた。

「…マリン、本当にいいのか?」

耳元で聞こえた我愛羅の低い声に
マリンはドキリと胸を高鳴らせた。

『うん…。』

「マリン…ありがとう、優しくする。」

再び、
優しいキスを落としてくる我愛羅の首に
マリンは自ら腕を回した。





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