三週間がたち、世間は翌日に迫ったバレンタイン一色に染まっていた。
マリンは、綱手からタイミング良く
「久しぶりに砂の里へ
元気な顔を見せて来たらどうだ、」
と、2日間の休みを与えられた。
マリンは自宅へ帰ると早速、
お菓子作りを始めた。
我愛羅は
甘い物があまり好きではないので
マリンは、ビターチョコレートを使った
甘さ控えめのチョコレートティラミスを作った。
そして、カカシやテマリや
カンクロウには大量のクッキーを焼いた。
ラッピングまで完璧に済ませ、
改めて見てみると、
明らかに一つだけ
気合いの入り方の違う袋があり、
マリンは恥ずかしさで顔を赤くしながら
そそくさと
その袋をキッチンから自室へ運んだのだった。
★
「えっ!!1人で泊まりがけ!?」
明日から2日間
砂の里へ行くと言ったマリンの言葉に、
夕飯を食べていたカカシは箸を投げ飛ばし、ダン!と机を勢い良く叩いた。
「まだ成人してない、嫁入り前の娘が、
いくら彼氏とはいえ、男の家に
お泊まりとは!!はしたない!!
そんな子に育てた覚えはない!!!
絶対駄目っ!!」
と、もう周りから見れば
駄々を捏ねる子供の様に
カカシは足をバタバタとさせた。
『ちょ、お兄ちゃん落ち着いて!
何も我愛羅の所に泊まるつもりは無いからね!?
ちょっと顔見せて、
チョコ渡すだけだから。
我愛羅にも何も言ってないし、
向こうでちゃんと宿予約して次の日のお昼には帰るよ!!』
だから安心して。と兄をなだめるマリン。
もはや、どっちが年上かよく分からない構図である。
「そ、そっか…それなら、
まぁ、いいけど、ね。」
チラチラとマリンを見るカカシ。
何を言いたいのか、長年一緒にいるマリンはすぐに察し、可愛くラッピングされた袋を差し出した。
『もちろん、お兄ちゃんの分もあるよ。
よかったら食べてね!』
ニコリと笑ったマリンに、カカシは
すっかり鼻の下を伸ばしたのだった。
手のかかる兄だが
マリンも愛おしそうにそんな兄を見つめるのだった。
★
翌日の朝、神龍に乗ってマリンは
木の葉を出発し、
昼頃には砂の里に到着した。
バレンタインデーの影響か、
里の繁華街では、多くの店がチョコを前面に売り出していた。
マリンが風影邸に向かって歩いていると
ちょうどマリンと同い年くらいの
女の子達が店先でチョコを物色しながら会話している内容が聞こえてきた。
「ねぇ、
今年の本命はズバリ誰にあげる?」
「ミヨはもちろん彼氏でしょ?」
「カナは?狙ってる人いるの?」
「上忍のムサシさんは?
むっちゃカッコ良くない?
今フリーらしいよ!」
「私はタケトさん派だな〜」
気になる男子の名前を次々上げていく
女の子達の会話を聞き流しながら
マリンは
『そういえば最近
サクラ達と女子会してないなー、
帰ったら予定合わせて招集かけよう』
と、帰ってからの予定を頭の隅で
考えながら、風影邸に向かって足を早めた時だった。
「あっ、カッコイイと言えばさ…」
再び女の子達から聞こえてきた会話の内容に
マリンは思わず足を止めた。
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