暴かれた裏の顔
市長室に通されたマリンは

「市長をお呼びするので、
少々お待ち下さい」

と言って
部屋を出たゲントを待っていた。

しばらく待っているといきなり
ドンドン!という音が聞こえて
マリンは肩を震わせた。

どうやら音は、
市長室に置かれているタンスの中から
聞こえる様だった。

『な、なに…』

マリンは恐る恐るタンスに近づき
意を決して扉を開けた。

『!!』


扉を開けると
口にガムテープを巻かれ、
手足をぐるぐるに紐で縛られた
中年男性が床に倒れ込んできた。

『だ、大丈夫ですか!?』

マリンは慌てて
男性の口のガムテープを剥がした。

「っは!君、今すぐ逃げろ!
ゲントは「あれ、起きちゃったんですか?市長。」

後ろからゲントの声が聞こえ、
マリンが距離を取ろうとした時には既に遅く、
口と鼻を塞ぐように布があてがわれた。

『っ!!』

布から薬品臭を感じたマリンは
必死に抵抗したが
次第に身体に力が入らなくなり、
やがて意識を手放した。









(マリン、マリン、大丈夫か)

神龍の声に
マリンが目を開けると
薄暗い牢獄の様な場所にいた。

『(えーっと、
神龍、これはどういう状況なの?)』

(ゲントという男に捕まった。
俺が動けばよかったのだが、
どうしてもお前の
手足が思う様に動かなくてな。
お前は4日間意識が無かった。
なにせ、お前が4日前に吸わされた薬品は、猛毒だ。普通の人間なら即死だろうな。
脳と主要臓器には結界を張って毒の侵食を防いでおいた。)

マリンはぶるりと背筋を震わせた。

『(神龍のおかげで死なずに済んだよ、
ありがとう。
さて、どうやって抜け出そうか…)』

マリンが身体を動かそうとすると
ビリビリと痺れた感覚があり、
思うように動かない。

(神経にはまだ、毒が効いているな、
少なくとも今日中は
思うように動かないだろう。)

『(えぇ!ど、どうしよう…)』

その時、
ギィィィと重い扉が開く音が聞こえた。

「これは驚いたな…貴女なら
さすがに死ぬ事は無いと思っていたが
こんなに早く目を覚ますとは…
どうやら毒を薄め過ぎた様ですね。」

「さすが女神様だ。」と
飾り付けたような笑顔をしながら
ゲントが近づいて来た。

『何が目的ですか』

冷たい声でマリンが言い放つ。

「それは、
もちろんマリンさんの力ですよ。
あなたと私が組めばどんな事も出来る。
そうでしょう?
僕は、こんな小さな里で生涯を終える気は更々ない。
力を持った国を侵略し、
僕がこの世界を操るんだ。」

『私の力はそんな事のために
ある訳ではありません。
あなたに協力することは出来ないです。
今すぐここから出して下さい。』

「無理です。
あなたを帰すつもりは無い。
そうですね、一生僕から離れられないようにまずは、僕と子供でも作りますか?」

不敵な笑みをマリンに向けるゲント。

『(こ、この人
頭のネジが確実に外れてる…怖い…)』

「あなたは美しいし、力もある。
僕とあなたの遺伝子を継ぐ子はきっと素晴らしいでしょうね。

逃げたいなら逃げてみますか?
この中にはセンサーがついていて
あなたがこの檻から出たり、檻を破壊しようものなら、里のガス管に取り付けた起爆装置が起動します。ガス管は里の全ての民家に繋がっています。
つまり、起動した瞬間、里は跡形も無く消える。

ああ、あなたならそのセンサーごと止めてしまう可能性もありますね。
ちなみに起爆装置の大元のスイッチは僕が持っている。
センサーに異常が起これば僕はすぐに分かります。そうなればどうなるか…わかりますね?」


『!!』

「関係のない大勢の人を巻き込みたく無ければ
あなたは、私に従うしかないのですよ。」

『……。』

マリンがここまで追い詰められたのは
生まれて初めてで、
人知れない恐怖を感じて身体は、
無意識に震えていた。

「万が一、あなたの事を助けに来る輩がいたとしても、この建物では
僕の部下100人が厳重体制でいるからね、
なかなかの有力者達だ。
まんまと捕まるだろうね。」

『っ…』

「ああ、絶望と、恐怖に震える顔も美しいね…。ますます気に入ったよ」

ゲントは、キィィ、と檻を開いて
熱い視線を送りながらジワジワとマリンに迫る。

『い、いや!来ないで!!』

「ああ、早くその美しい身体も暴いて、
めちゃくちゃにしたい」

『嫌!止めて!お願い来ないで!!』

マリンは自由に動かない足を必死に
力を入れてゲントから距離をとろうとするが
すぐに捕まってしまう。

「大丈夫。すぐに何も考えられないくらい気持ち良くしてあげるからね。」

ゲントの手が
マリンの太ももを這うように撫で上げた。

『〜〜!!いやぁぁ!
我愛羅っ!我愛羅っ!』

感じた事のない不快感と恐怖に
マリンは目から涙を溢れさせながら
届かないと分かりながらも
この場にいない我愛羅の名前を必死に呼ぶ。

「ああ、泣く姿もそそるねぇ…
でも、そろそろ黙ろうか。」

ゲントはパァン!とマリンの服を
無理矢理破り、露わになった
マリンのブラジャーに手をかけた。

『いやぁぁぁ!!』

堪忍袋の緒が切れた神龍が
マリンの身体を
無理矢理にでも動かそうとした時だった。



バァァンッ!!と凄まじい音をたてて
部屋の扉が何者かによって蹴破られた。




11/32
<< bkm >>