さよなら愛しき我が子





−マリン、こんな私達をどうか許して。

ママ?

−愛しているよ、マリン、
この先何があろうと、お前は俺たちの子だ。

パパ?

−どうか地上を救ってあげて、
あなたは強い子よ、困ってる人々を助けてね?

困ってる人?
…うん、分かった!!

−どうか、幸せになってマリン…
離れていても私達は家族よ。
神龍もあなたを守ってくれるわ。

ママ?パパ?
どこに行くの?もう会えないの?

-ママとパパは大事なお仕事で
遠くへ行ってしまうけど、
ずっとお前を見守っているからね。

マリアがマリンの首に
ネックレスをかけた。
エメラルドグリーンの小さな宝石が
キラリと光っている。

ママ、これは?

-これはお守りよ。
ママとパパからのプレゼント。
どんなものからも、あなたを守ってくれるわ。

ありがとう、ママ、パパ。

マリンはぎゅっとネックレスを握ると
次の瞬間、辺りは真っ白になった。






地上に降り立った我が子を
心配そうに見つめるのは、女神マリア。
マリアの肩を抱きながら夫である神ゼウスは
「大丈夫、強い子だ俺達の子は。
きっと地上を救ってくれるさ。」
と自らに言い聞かせるかの様に
呟きながら我が子を見つめる。

ここ1年、地上では驚異的な津波や嵐、
竜巻などの歴史に残る程の天変地異が起き、
各地では膨大な被害を受けていた。
その全てが、天界での神々の争いが原因である。
地上に大きな被害をもたらす程神々の争いは激しく、
天界は今にも崩壊寸前であった。

このままではいけない、と
互いに神々の頂点に君臨する
マリアとゼウスはその争いを断つため、
命をかけて神々と闘い、争いを鎮める事を決めた。

しかし、まだ幼い愛しい我が子を
この壮絶な神々の争いに巻き込みたくはなかった。
そこで二人は我が子を地上へ送り、
天変地異で荒れた地や人々を救う使命を与えた。

マリンには神の力は残るものの、
天界にいたこと、自分が神の子である記憶はない。
そして、人間界に降りた時点で
寿命という物を授かり、不死身では無くなる。
"力意外"はごく普通の人間、という事だ。

しかし、二人の血を継ぐマリンには
二人をも越える膨大な力を持っており、
さらに、神の化身でありながら天界と地上の創造神である
「神龍」という龍が生まれた時から体内に宿っている。

神龍は地上にいる尾獣達の神でもあり、
誰も逆らわず、神龍の言う事を聞く。
つまりマリンを簡単に言い表せば、
天界の神をも超える力を持つ女神でありながら
尾獣達をも操れる少女である。

地上でマリンの力を上回る者がいる様な事はまず、ない。
両親が心配しているのはただ一つ。

「変な男にたぶらかされないかしら!?
あの子可愛いから!!」

「ああ、俺達の娘、超絶可愛いから心配だ…
優しいし、素直だし、もう完璧じゃん!!?
完璧な子じゃん!!」

神龍はいつもの2人の様子に
ため息をつきながらも
このやり取りを見るのも「最後」だと
思うと、何とも言えない気持ちになる。

(はぁ…俺がいる、
それにお前が思っているよりあの子はしっかりしているよ。
後は任せろ。)

神龍は、天界は頼んだぞ。と言い残すと、
地上へ降り、マリンの中へ戻った。

「ああ、そうだな、マリンの結婚式と
孫の顔が見れないのが残念だが、
あの子ならきっと大丈夫だ。信じよう。

さぁ俺達も最後仕事をしよう。
マリンの幸せのためにもね。
マリア、愛しているよ、最期までずっと一緒だ。」

「私もよ、永遠に愛している、ずっとマリンを見守っていきましょう、二人で」

固く手を取り合って二人は神々の戦場へ旅立った。





 

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