風影様の新しい夢






「…マリン、すまないが俺は
もうお前と友達をやっていく自信がない。」


空気が凍りついた。


え…。と我愛羅を見つめるマリンの顔は
今まで見たことも無いほど
深い悲しみで溢れていた。

「(…違う。
そんな顔はしてほしくない。)」


「すまない、マリン。
言い方を誤った。訂正させてくれ。」

『??』

「一年前、俺が風影になったら
マリンに伝えたい事があると
言ったのを覚えているか?」

『…うん、覚えてるよ。』

「…俺は思ったより欲張りみたいだ。
風影になるという夢を叶えたにも関わらず
また欲しい物…新しい夢を見つけた。」


『新しい夢?』


「ああ、


マリン…俺にとって、お前はもう
友達という枠には収まらない程
大きな存在だ。


好きだ。マリン。


どうやらお前に出会った、
あの幼い頃から俺はお前にずっと
恋をしていたようだ。」


『!!』


「いつか、これから先の将来、
お前と家族になりたい。
それが俺の新しい夢だ。」


『っ…!!』

マリンの黒い瞳から涙が溢れた。
優しい笑みを浮かべている。

「(嬉し涙…だろうか?)」

『我愛羅くん…』

「我愛羅」

『へ?』

「…我愛羅と、
呼んではくれないのか?」

我愛羅がマリンの目から
零れた涙を拭ってやると、マリンは
頬を染めながら可愛い笑顔を浮かべた。

『うん、私も、好き!
我愛羅が大好((ガバッ!))!!』

「すまない、抱き締めたくなった…
あと、…俺の方が好きだ、ずっと好きだったんだ。
この気持ちは誰にも負けない。

これからは、守られる側ではなく、
お前を守っていきたい。」

『我愛羅…』

「マリン…」

『でも、でも私がいたら、
迷惑にならない?重荷にならない?
我愛羅は風影だし、これから里を背負って立つのに、』

「迷惑もなにも
お前が居ない方が迷惑だ。
お前になんと言われようと
俺は、お前を諦めるつもりはない。

それに…
好きな女1人手に入れられない奴に
風影なんぞ務まらないだろ?」

『が、我愛羅…』

フッ、とマリンの耳元で笑った我愛羅は
更に強くマリンを抱きしめた。

我愛羅から伝わる
暖かいぬくもりにマリンは目を閉じた。

シャラ…

マリンの頬に何かが当たった。

『あ、これ…』

我愛羅の首元からは
幼き日にマリンが我愛羅に渡した
淡いエメラルドグリーンの宝石が
施されたネックレスが覗いていた。

「ああ、マリンに貰ったお守りだ。」

『ずっと着けててくれたの?』

「?当たり前だ、お前から貰ったのだ、
一時も肌身離さず付けていた。

…それに、これを付けていると
たまにマリンが子守唄を歌ってくれる夢を見るんだ」

クスリ、と笑う我愛羅。

ああ、あれかー。と思い出したマリンは、
14年振りにあの子守唄を送った。

「ねーんねーん、ころーりーよ、
おこーろーりーよー♪でしょ?」

クスリと笑うマリンに釣られ、
我愛羅はクスクス笑いながらも
不規則なリズムを刻む子守唄に
不思議と眠気を誘われ、
瞼を落とした。




「ふふふ…」

穏やかな寝顔を浮かべる
大好きな人の頬にマリンは自分の頬をすり寄せた。

『パパ、ママ、おじいちゃん、
私、今とっても幸せだよ。』


マリンの中で寝ていた神龍が
柔らかく微笑んだ。





 

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