ありえない。そう呟いたクリスにレニーは無表情で資料を差し出す。

そんなものは無用だった。アレは、人の手に負えるものではないと本能が告げていた。アレについて知覚し得るだけの情報が頭の中に溢れて溢れて止まらない。アレを決して目覚めさせてはならない、決して伯爵の手に渡してはならない。

「アスフォード元帥? 何故ここに…」

部屋に続々と入ってきた班長達は何故か居るクリスに戸惑っているようだったが、長年生きているならばこの計画に加わっていてもおかしくは無いとでも思ったのだろうか。床のガラスの下で眠る彼を見て固まっていたクリスはルベリエも居ることに気づくと思わず舌打ちした。

「またアンタの仕業か? 長官殿は人体実験に御執心か」

趣味が悪いね、と嫌悪も隠さずに言うがルベリエは特に気にした素振りも無い。それを機にクリスは班長がソレを興味津々に眺める輪から一歩離れ、壁にもたれてその様子を黙って眺めていた。

  
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