未だにざわめくホールを眺めている俺は、行きますよと不快感を隠そうともしない長官に急かされ、舌打ちしてアレンを抱きかかえ空を走った。抵抗されると面倒だから俺にやらせたそうだが、別に鴉が居ればよくないか。一人居れば十人力だろ。

良く分からない廊下を永遠と歩かされる。

「それで、わざわざあんな観衆の前で捕らえて、何をする積もりなんだ?」
「…君、ウォーカーを」
「っちょ、おい!」
「貴方はここまでです。警護、ありがとうございました」

新人君にウォーカーを奪われると、彼らは目の前の扉の中へ入って行った。扉の中に居たクロスは俺を見ると追い遣るように手をしっしと向ける。何なんだ一体。俺が居る意味は一体どこに合ったのだろうか。

「なぁにが、貴方はここまでです、だよッ」

イノセンスの発動を止めると、微かに浮いていた体が重力に引き戻され床にしっかりと足がつく。アイツ、ただ俺を良いように使いたかっただけじゃないか。結局、俺は教団に君臨する首輪の付いた神の子、救世主なんだって他に知らしめるために。
そんなこと、当の昔に知っているというのに。

  
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