任務地は、完全に廃墟と化した農村だった。辺り一面に散らばった農作物が一見目を引くが、その傍らには死人の姿がある。
珍しい光景ではない。アクマに襲われた田舎の地は少なからずこのような運命を辿るし、俺もこの光景を幾度と無く見てきた。しかし、リナリーが恐れもせずにずけずけと歩く様子はあまり見られたものではないと思う。

「(可哀想に)」

流石に「すれてる」と言っても、年頃の女の子らしい恐怖とかはあるんじゃないかと思ったんだが、リナリーにとっても、この光景は見慣れたものとなってしまったらしい。……世の中理不尽だな。

突然、リナリーは思い出したようにくるりと向きを変えて俺を見た。

「お兄さんには兄弟っているの?」
「……いいや」

居たとしてももう死んでるだろうな。今のご時勢じゃ戦争でぽっくりだ。
答えると、彼女は突然笑顔になった。年相応の可愛らしい笑顔。ロリコンじゃあないがこれだったらなってもいいかもしれない。

「私にはいるわ。私の大好きな、大好きな兄が」

そういや資料にあったな。最後までリナリーが教団に行かせることを拒んだ、リナリー会いたさで教団科学班に入団した恐ろしく優秀な兄。
というか、別に俺が懐柔なんてしなくてもお兄さんつれてくれば万事解決なんじゃないか? 言わないけど。

  
- ナノ -