黒髪の綺麗な子と一緒に任務に行くことになった。未だ年端もいかない様な子供で、しかしその目は正に死んだようと形容するのが相応しい。どうやら彼女は中国人のようで、時折俺の方をちらりと見ては直ぐに目を背けていた。残念、俺は微日本人だ。

汽車の進みが遅い。国境をまだ越えないノロさには感嘆するが、いかんせんこの空気が重すぎて。

「リナリーっていうの?」
「……うん」
「綺麗な髪だね」
「ありがとう、お兄さん」

その髪を褒めると、死んだようだったのが一瞬だけ笑顔に変わった。
リナリー・リー。素質はあるが脱走癖があり、ことあるごとにホームから逃げるらしい。彼女が着てから長官が来る頻度が高くなったとかなんとか。

今回の任務の資料と共に渡された数枚の紙。それには身長体重を始め、大体全てのパーソナルデータが記入されている。
つまりこの任務はブラフ。本当の任務は、リナリー・リーの懐柔らしい。

  
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