無垢でいられなかった花
虚空から、手がさし伸ばされた。払おうとするけど、その手は透明な、実体を持たないモノで、私の手はすかっと通り抜けてしまった。私の行動逐一モニタリングしている理事長は焦ってエレメントチェンジをしようとしているらしいが、おそらくこの目の前の阿呆のせいで無理だろう。

私の目の前には、ミカゲがいるのだ。



「うっそ、なんでこっちに来るんだよ……」
「……何をぶつぶつ話しているのです?」



何? これは運命が変わったと思って良いのか? でもこれだと私には死亡フラグしか立たない。



「貴女は、変わった人ですね。世界に縛られないその体……とても羨ましい」
「はあ?」



私の頤に手を掛けたミカゲは、ふふふふと楽しそうに笑った。なんなのこの人! 変質者!

私の不機嫌な様子には目もくれず、奴は尚も楽しそうに話す。



「その能力からして面白いですが、一番興味深いのは  



言うや否や、ミカゲは私の頤に掛けていた手を離して、額を人差し指で突いた。痛みで一瞬瞼を閉じるが、文句の一言でも言ってやろうと目を開けると。

奴は、どこにも居なかった。
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