本当は怖い転生白石主の話-1 (4/19) side:財前
「四天宝寺って、こんなに弱かったの?」 「けんやくん?」
部長の声には珍しく、心が篭っていなかった。呆然と謙也さんを見つめるその目はいたく純粋で、今何が起こっているのかなんて理解している様子ではない。部長、と声を掛けると(声がすこし震えてしまった)、部長はようやく気が付いたようで深く息を吸った。
「自分、誰や?」
視線の先には、にこにこと笑う少女がいた。今まで、謙也さんが戦っていた相手。汗すら掻かずに彼女はうーん、と首を傾げる。
「誰って、ね。うーん」
数秒考え込んで、彼女はにっこり笑った。
「そうだ。教えて欲しかったら、」
私に勝ってみせてよ。そう傲慢に言った。
後々よく考えてみれば、酷く印象の無い少女だった。唯そこらの奴らより酷く強く、とても厚かましいということ、だけだ。レギュラーの謙也さんが1ゲームもとれないなんて、冗談では済まされない。何時の間にか平部員のみならず生徒も居て、コートの周りは人で溢れた。 部長は何時もと変わらず――否、何時もとは違う雰囲気で快活に笑った。
「――ええよ。やろうか、嬢ちゃん」
その表情に、寒気が走る。
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