真田の双子の妹-1 (10/19)
弦ちゃん、父さん、母さん、おじいさま。私ね、中学はここを離れて暮らしたいの。ああ、別に一人暮らしって訳じゃなくてね、あの、私ね、

私は生粋のおばあちゃんっ子だった。だから、おばあちゃんが生きている内はあの人のところで生きていきたいと思っていた。両親も皆も私のそれは重々分かっているので、おばあちゃんこそよければ、と賛成してくれた。おばあちゃんも笑っていいわよ、と言ってくれた。おばあちゃんは昔は薬剤師、と呼ばれるような職に就いていた。私もそれを目指していた。私の体が弱いこともあって、ど田舎のおばあちゃんの家からその近くの学校に通うことになった。

事実はほんの少しだけ、違う。私は、双子の兄のファンに辟易して、そのような言い訳を作り上げた。でもおばあちゃんが大好きだというのも、薬剤師になりたいというのも全て本当だ。

やたらテニスの上手い兄にはまだ小学生なのに熱心なファンが居た。出かける度にそれらに追い回されるのは御免だと、思ったのだ。残念ながら、兄と私は二卵で堅物な印象を受ける彼とは正反対らしい、のだが、やはり似ているものは似ているらしい。スポーツ用品店に行ったらバッチリアウトだった。
更に、兄は努力家で、私とは違って生まれついての健康体。昔から喘息やなんやらの病気を引き起こしてきた、普通以上の努力をしようともしない私とは大違いで、双子なのに、と比べられる。そりゃ私は努力してないから、女だから、違うのは当然なのに。

そういうの全てが嫌になって、私は云わば、兄から逃げたのだ。
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