「よかった」

「へ?」



何が、と聞くと、真田は本当に嬉しそうに笑った。



「もしかしたら、お前はテニスを辞めてしまうかもしれんと思うと毎日気が気では無かった」

「っそんなこと、は…」



無い、とは言い切れないのが俺の虚しさである。でもそれは、真田を避けていたのは俺のエゴでしか無い。だから決して、彼の所為では無い。

真田は俺の右手を優しく撫でた。



「でも、幸村は立海に来た。テニス部に来た。俺はそれが嬉しいのだ」

「さなだ、真田っ!」



ああもう、どこまで優しいのだろう。何だか甘やかされているような気がしてならない。左手に持っていた鞄を床に落とすと、俺は自分より少し背の高い彼に飛びついた。

人前で泣くのは、久しぶりだ。
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