「き、君がリヴァイだろ!? 今や調査兵団はおろか憲兵団や駐屯兵団にもその噂が知れ渡っているんだってね! 来たばっかなのに中々やるじゃないか!」

髪がパイナップルのようだと思った。やたらと興奮したように顔を近づけて話してくるので(このとき膝を屈んでいたのが若干屈辱的だったが)思わず手が出る。大声を出しながら引っ繰り返り、いてててと腰をさすりながらも何故か、どことなく嬉しそうな表情である。

「……お前、誰だ」

そういえば見ず知らずの人間を沈めてしまった。奴は足を出す前にそれを先に聞いてよ、と言うものの、その間も遠慮なく俺をじろじろ眺めている。

「エルヴィンの秘蔵っ子にしては背が低いなぁ」

それは俺の所為では無い。
何を言っても特に反応が無い俺につまんないなあと零した彼(彼女)だが、しかし俺の問いに一向に答えない。もう一回殴ってやろうかと手を上げると、ようやく俺の顔を見て、にんまりと笑った。

「私はハンジ、ハンジ・ゾエだ。次の壁外調査で同じ班みたいだったから挨拶でも、と思ってさ」

案外律儀だな、と先程の奇行による第一印象を見直そうとしたのだが、いやその前に疑問に思うところがあったはずだ。俺は次の壁外調査について、誰にも、何も聞かされていないのである。
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