これが妄想なら大したものだ。ここの人類は巨人を極端に恐れ、調査兵団は巨人を殺し過去奪われた土地を奪還する為にあると言うのだ。これがこの世界の現実だ、と噛み締めるように彼は言う。そもそも俺の知る地球でも無かったというわけだ。

「……つまり、お前は巨人と戦って死ねと言ってるんだな?」
「そう、いうことになるね」
「アンタ、相当の悪魔だな」
「よく言われるよ」

図太いのか、無神経なのか。この男はそのどちらでも無いような気がした。率直に嫌味を言っても笑顔でかわすのは誰にでも出来ることではない。
ふと、昏倒させられる前、際立って無表情で俺に手刀を当てたことを思い出した。この男は自分の利益ではなく、公の利のみを追求しているのか? そんなこと出来るはずが無い。誰だって欲深い人間だ。何が、どのようなことがあれば、この男のように冷徹になれるのだろうか。

まあ長々と書いたが、簡潔に言えば“興味が湧いた”、その一点に尽きるのだろう。そのとき、俺としたことが、気が付けばその制服を纏っていたのだ。
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