ここでの選択肢は三つある。ここから逃げる、よく分からないけれど入団する、そして恥を承知でこの世界について聞くこと。
聞かぬは一生の恥と古人は言った。知らずば人に問えとも言う。聞いてからでも遅くは無い、だろうか。張り詰めた思考を吹き払うかのように息をはいて窓の外を見ると巨大な壁がその存在感を誇っている。なんだあれ。

「あの壁は、」
「ああ、あれが“壁”だ。我々人類が、この世界で今までのうのうと生きてこられたのもあの壁の恩恵があってこそだろう」

待て、こいつは何を言っている? 人類は何かに襲われているのか。何か強大なものをあの壁が遠ざけていると言うのか。コイツが言っていることの意味が分からない。

「そもそも、調査兵団って何だ?」
「……それは本気で言っているのかな」
「こっちは碌な教育受けてなかったんでね、初歩の初歩から教えてもらおうか」

こういうことはドヤ顔で言えば恥ずかしくないってじっちゃが言ってた!
というのは嘘だが、地下街出身だということも踏まえれば可笑しくは無い、のか? 未だにこの国がどうなっているのかは見当がつかない。一体ここは地球の何処なんだ。俺のことを改めて不審そうに眺めたエルヴィンだったが、一応納得したのかさて、と話し始めた。
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