神奈川の夏はそれなりに暑い。土曜日の今日、真田が親戚の法事で休むということを知っていた仁王は、真田が居ないならば暑いしダルいしサボってしまおうかと終礼の最中に画策した。そうなれば善は急げ、終わるなりいの一番に教室から出て帰ってしまえば問題はあるまい。

「Repeat after me,すみませんでした」
「……すみませんでした」
「もう部活をサボったりしません」
「……それはどうか分かりません」
「ねえ繰り返せって言ったでしょ仁王」

結論から言えば、幸村はエスパーだった。

仁王は今までに類を見ないほどの速さで教室を出て廊下を走り、階段を駆け下りた。まだ誰も居やしない下駄箱で靴を履き替えて玄関を飛び出た。そこに、幸村が居たのだ。

「ゆ、幸村……」
「家に帰るにはまだ早いと思うんだけどなあ、仁王」

後に聞けば、幸村はその日朝から病院に出向いていて終わったのがぎりぎり午前中だった。授業は終わっているものの今から行けば部活は出れるだろうと思い学校に来ると、丁度下校しようとしていた仁王に出会ったのだと言う。

勿論仁王はそんな事情も、そもそも今日幸村が休んでいたことも知らない。“神の子”に恐怖した彼に出来ることといえば精々幸村平伏し、しばらくの間真面目に部活をサボらず活動することだけだった。


笑っちゃうよまったく
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