この村を中心に周辺一帯の名前を“立海”と云うらしい。その名は代々この村を治めてきた強力な力を持つ妖怪たちの集団の名前から取られているそうだ。妖怪真田はそこまで語ると一息つきそして、ともう一度俺達を見据えた。

「俺達はこの領土を広げる為に、周辺の村と戦をしている」
「いくさ? なんやら物騒な話やな」

せやから剣やら魔法やら俺達に付いてきたんかなあ、と謙也くんはのんびり考えていそうだがしかし俺達はただの人間で、この立海の土地争いの為に戦う必要性は無いはずだ。そう思ったのを感じたのか妖怪柳は無論断っても構わないのだが、と言って笑った。どうも俺達にとっては良くない話らしい。

「妖怪にも様々な力を持つものが居る。そしてその力にも強い者から弱い者まで、いわゆる“ぴんからきりまで”居るわけだ」
「つまり、俺達妖怪の中にも格差があるということだ。力がある者を仲間に加えれば勝って土地を得ることが出来る。しかし戦に負け続ける者たちはそれに意義を唱えた。生まれつきの能力で勝負するのは不公平なのでは、とな」
「……それで?」
「戦の方法は、俺達“妖怪自身”が戦う方式ではなく、俺達妖怪が“力のある人間”を異世界から召喚し、その土地の代表として戦わせるものに変化した。幸い俺達は俺達と同等以上の力を持つ人間の召喚に成功した。だが……」

ふむふむ。彼らが話すごとに頷いていた俺達二人だったが、突然不穏な接続詞を付けて黙り込むものだからはてと首をかしげた。まあ大体察しは付くが。

「彼は、暫く代表として出れないのだ」
「……は?」

予想していたのと何か違う。

「領土の代表として連続十回続けて出て、尚且つ勝ち続けてしまったのでもう出ないで欲しいと周りから要請されたのだ」
「へ、へえ」
「そこにお前達が来た、というわけだな」

正直そんなに勝った後に、だなんて気が重いしそもそも人相手に戦うだなんてしたことのない俺達が出来るわけなかったのだが合計七人の期待する目には勝てずに渋々頷いてしまった。というか七人の下りであれっと思った方も居るかもしれないが何故かこの立海の集団に幸村君がいないのである。
- ナノ -