断じて俺こと白石蔵ノ介はショタコンでもロリコンでもないのだが確かにこれは心引かれるものがある。それが萌えだということは解りきっているが昔から言ってみたい台詞があるので一瞬だけ付き合って貰いたい。はいせーの、

「立海の魔王様がこんなに可愛いわけがないっ!」
「“俺の”言わなかっただけまだ紳士やな」

U-17の立派なレストランの中央で子どもに抱き着きながら叫ぶと周囲がドン引きして体感温度が二三度下がったような気がした。うん分かってるって俺のキャラじゃないってさ、というかその子どもを見たとき真っ先にショタやと呟いた侑士君には言われたくない。俺のは小動物を愛でるのと同じ愛情だ。決して俺はショタコンではない。大事なことだから二回言った。

その子どもは青い髪色の大変可愛らしい子である。朝、財前と一氏がいつも通り(財前は否定するだろうが)レストランでじゃれあっているところに偶然乾汁ver1.56を持った乾君が偶然にもぶつかり、偶然そこにいた幸村君に乾汁が掛かるや否やどこから沸いたのか白い煙がもくもくと立ち、幸村君が居た場所には小さいその子どもが居たというわけだ。真田君に確認すれば小四位の幸村君だと言うし、しかもご本人が幸村精市だと仰っているのでそうなのだろう。記憶は幼少期のままで俺たちのことなんぞ微塵も憶えちゃ居ないが。とりあえず財前と一氏と乾君は後で説教だ。

まうそんなことを考えているだなんて知らない小幸村君は俺と顔を合わせるときょとんと目を瞬かせた。

「……お兄さん誰?」
「俺は白石言うんや。さっきの真田君とか、周りの人たちとここでテニス特訓してんねん」
「テニス? 俺もテニスやってるんだ!」

笑顔が眩しいなぁ。ついつい可愛くてもう一回ぎゅーっと抱き締めたのだがしかし思いの外力強く抱き返されしかも耳元で見つけた、と私の名前を囁かれるという恐怖体験に遭遇して真っ青になったのを謙也くんに変な目で見られた。やっぱり、成長した後の記憶は無くとも分かるもんは分かるらしい。
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