常識として、巨人には半刃刀身以外の武器は効かない。例えば銃や大砲などの飛び道具も、その足を止めるには便利ではあるのだが、殺すには至らない。飛び道具が使えればどんなに便利になるだろうとは思うが、今のところ実現はできていないようだ。

しかし万一のときのために、俺達調査兵団は拳銃を携帯している。俺は一度も使ったことは無い。が、携帯するにあたって一通りの訓練をしなければならないのである。

「……使わないなら意味無いのにな」
「まーこればっかりはねえ、一応足止め程度には役に立つし」

当たればの話だけど、とハンジは茶化したが実際その通りである。あんな小さな銃弾、目など身体の柔らかい部分にでも当たらなければ意味の無い代物だ。



こんなことを説明しているのも、人手が不足しているらしくその訓練に俺も教官として出なければならないようだからだ。否応無しに、というか事後承諾だったのだが、正直な所俺も銃を扱うのは苦手だ。使う機会が無ければそんなものだろう。

流石にミカサは説明をすればすぐに扱えるようになった。他の奴らも暫く練習していれば直ぐに的に当たるようになる。どうせ使わないのになあ、と何度目かの溜息をついたところで、丁度エレンとジャンが拳銃について話しているのが耳に入った。

「銃ってカッコいいよな。立体機動術もカッコいいけど、俺は銃撃戦とか憧れるぜ」
「そうかあ? 銃に撃たれたら痛いだろ」
「それを言うなら半刃刀身だってそうだろ。てか撃たれても避ければいいんだよ」

こうやって、とジャンが銃を避ける真似をするが。

「マトリックスか」
「……?」

思わずツッコんでしまったが、そういえばこの世界には映画など無いからその手のネタが通じないのだった。俺の隣に立っていたハンジは何言ってんだコイツみたいな目で不審げに見てくるし、暫し散々だった。


黙して語らず
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