お (1/5)
うんうんと頷いているがおそらく山崎は話を一ミリも聞いていない。奴の首が横に伸びているのがその証拠だがこんな深夜まで仕事の話をさせるのも悪いかと思ったのでそこんとこは勘弁してやった。優しいだろ俺。

「それじゃあおやすみなさい鬼の副長」
「……」

思わず手が滑ってそのへんにあったハリセンで奴の頭を全力で叩いたら何故か黒い靄みたいなのが俺の身体を包んで、目の前が真っ暗になった。そういやなんでこんな所にハリセンがあったんだ?



「いってェ」

もしかして仕事の途中で寝ていたのかと気付いて起き上がるがどうも様子がおかしい。そういえば山崎を叩いたら急に眠くなったんだっけか。それにしても視線がいつもより低い。視線を自分の身体に向けるとってあれまぁこれは俺の体じゃあない山崎のだ。
自分の身体を求めて視線を彷徨わせると、ハリセンを持った状態で畳に寝転がっていた。

「……夢、あいてッ」
「(ちょっとなんですかこれェさっさと俺の体から出てってくださいよ副長)」

それが出来たら俺もいまこんなに困ってはいないだろう。