次の日の二時間目。うちのクラスは通常通りなら現国だったはずだけど、先生が有休をとったやらで音楽に変わった。俺達は文句を言いながらも、音楽室のある別棟に移動する。



「えー、移動せなあかんの」

「どうせ谷口センセの用事って娘の運動会とかそんなんでしょ」

「センセはアレなのに娘さんはめっちゃ可愛いもんなあ」



かくいう俺も、今年同じクラスになった小石川と駄弁りつつ歩いていると、不意に小石川は俺の肩を叩いた。



「あ、あれ財前やないか」

「ほんまや」



彼の視線の先には、紛うことなき財前がいた。アルトリコーダーを抱えているので、どうやら一時間目に音楽があったらしい。財前もこちらに気付いたようで一瞬目線が合った。



「……あれま、」



しかしながら、財前は俺の目を意図的に逸らして立ち去った。特に急いでいる様子も無いので、これはまさか避けられたのか、華麗にスルーされたのか。

ま、まさかね……
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