白石蔵ノ介は、自分から見ても完璧な小学生だった。母親に「自分は静かでええわね。もうちょい五月蝿くしてもええ位なんに」と言われたり、わいわいと騒ぐ同級生たちを横目に精神年齢が違いすぎるからしようがない、と小学校では穏やかな秀才を気取っていたり。

私はテニスは好きだ。テニスを始めたのは越前南次郎の試合のプレイバックだった。私の知っているテニスはオーラなんて出さなかったけれど、両親知り合いは気にせずに「天衣無縫の極みだ」と言うので、俺は空気を読んだ。

まあ元々はインドア派であったので、今生はスポーツ位やっておこうかと思っていた矢先に所謂テニヌであることを知ったので母に、テニスやりたいと言ったらめっちゃ喜ばれた。欲の無い子だと思われているのかもしれないがそれは違うと思う。むしろ逆だ。



兎も角。ある日、通っているテニスクラブに行くと、先生に二人の子を紹介された。



「忍足謙也です」

「忍足侑士です」



1人は活発そうな、もう1人は大人しそうな男の子だった。忍足、というのだからきっとあの忍足さんだろう。



「ゆーしとは従兄弟なんや。よろしゅうな! ええと、」



勢い盛りである。紛らわしいので謙也くんと呼ぼう。

謙也くんが首を傾げると、そういえば俺は名乗っていないと気づいてにこりと笑った。



「どうも、白石蔵ノ介や。よろしゅう」
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