「言われなくても……!」



テニスを二、三回やっただけの初心者に負けては、俺の名が廃る!

スイッチを切り替えると、謙也くんもにやりと笑った。



「負けてられへんっちゅー話や!」



謙也くんは丁度反対側に来たボールを追って、走って打った。しかし不安定な体勢で打ったためか、財前に見事に決められてしまう。



「足が速いだけじゃ、テニスは出来ませんよ」



財前君に笑われて若干イラっとしたものの、それも正論だったので俺は何も言えなかった。まあ、そりゃそうだ。



小休止しよう、ということになって、俺達は部室でドリンクを飲みながら交流を深めていた。ただ駄弁っていただけだが。



「そういえば、財前君はこの学校なんで選んだん?」

「家から近いからっす」

「それだけ?」

「何やもうちょっと位あるやろ……家から近いってだけでわざわざこの学校選んだなんて、自分酔狂やな」



去年はお笑いテニスとか彼らの生態を疑っていたものの、最近は慣れというか、スルースキルが高くなった。まあ財前君の気持ちも分かる。



「自分ホンマに大阪人かー? 頭固いで」



謙也くんがそう言って笑うと、財前は溜息を吐いた。



「俺駄目なんすよ。何でもかんでも笑うだの笑かすだの、意味わかんないっつーか」



うん、俺も去年同じこと思った。

しかし皆はそんな財前君をミュータントや宇宙人、地球外生命体扱いしだした。それは幾らなんでも失礼じゃないか…?
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