職員室を出て、コートの方へオサムちゃんと一緒に歩く。コートの手前まで来て、誰かが俺のことを呼び止めた。



「おお、新部長やないか」

「原先輩」



そうういえば、オサムちゃんは承諾を取ったとは言ったものの、本当に良かったのだろうか。気になるが、場の雰囲気を壊したくないので聞けない。

俺は、原先輩とオサムちゃんがすこし言葉を交わしているのを眺める。



「ほなまた、部活で会おな」

「あ、はい」



先輩はにこやかに去っていった。俺はコートへ繋がる門を開けようと手を掛けると、不意にオサムちゃんは言った。



「俺がお前に部長やらせるって言ったとき、原がなに言ったか分かるか?」

「へ? さあ」



嫌がったのだろうか、それとも憤慨したのだろうか。先を促すと、オサムちゃんは軽く笑った。



「“あいつなら、きっと優勝すると思います”って笑って言いよった」

「……」



その意味を図りかねて、俺は黙り込んだ。気にせずにオサムちゃんはにやにやすると俺の頭を強く撫でた。



「せいぜい頑張れや、聖書さん」
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