「何言っとるん?」



ぽかん、と白石は間の抜けた表情になった。俺はむにぃと白石の柔らかい頬を抓ると、ふんと踏ん反り返った。



「俺が白石と何年間一緒に居たと思うとるんや! 白石の考えとることなんでお見通しなんやで!」

「へぇ……」

「う、嘘ちゃうで!? ホンマに分かるんや!」



自分でも思う、白々しい。まあ、嘘は言っていない、と思う。少し脚色しただけだ。

白石は小首を傾げた。そういう女らしい癖でも彼なら一々様になるのが少し羨ましいと思う。けどなりたいとは思わない。そのまま口が開いた。



「そう、かもなぁ」

「っは?」



ああ驚いた。珍しい、白石が認めるなんて。

白石は苦笑するように目を瞑る。



「まあ、俺にこーゆうんは似合わんって分かっただけよしとするかな」



絶対に来年は出ない、と白石は呟いた。彼が握り締める紙をそっと見ると、『にんじん一本』と書いてあった。

嗚呼確かに、白石には似合わない。
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