新人戦は惜しかった。シングルスで出たのだが、途中で銀さんに当たって最近開発したという技“波動球”で撃沈した。左腕が痛い。



それはそうとして、目下の悩みは木下藤吉郎祭――所謂文化祭ってやつだ。どうやらテニス部、今年は劇をやるようだ。内容は“白雪姫”。そもそものところマネージャーも居ないこの部活に白雪姫はきついと思うのだが、彼等は「いないなら、女装すればいいじゃない!」という短絡的かつお笑い精神に塗れた思考を発揮した。



「誰が白雪姫やるん?」

「なるだけ顔がええ奴が……」



そこで、先輩達は一斉に俺のほうを向いた。面倒はお断りだったのだが、隣を向くと謙也くんまでこちらを見ていた。溜息を吐きつつも問う。



「……俺ですか?」

「白石やったら白石姫でええかな、イケメンやし女子票は取れるし十分やろ」

「はぁ、」



勝手に盛り上がる先輩らと、取り残された俺。

どうやら、拒否権なんて無いらしい。
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