ヘリコプターから降りてきた十五人程度の人達の中には見覚えのある姿や侑士くんが見えた。目があったので一応手を振っておく。

先頭に立っていた跡部らしき人が近づいてきて、俺は咄嗟に一歩後ろに下がった。やたら跡部が俺のことをじろじろ見てくるからだ。跡部は、俺の目を見て言った。



「お前が白石か」

「お、おん。今日氷帝が使う教室まで案内するで」

「助かる」



そこまでキャラが濃くなかったことに安堵する。案内している間も、俺のことや謙也くんのことを聞くだけで「俺様の美技に酔いな」みたいなことは言わなかったので、心の中で案外謙虚なのか、と呟いた。






練習試合といっても俺はただ脇でレギュラー同士の試合を見ているだけだ。丁度試合が終わりそうな雰囲気を察し先輩のドリンクを取りに行こうとしたところで、誰かに肩を叩かれる。

跡部だ。後ろには侑士君と、確か……向日が金魚の糞よろしくくっついている。



「おい白石、俺の相手をしろ」

「え、いや、なんでやねん」



テンパりつつも問うと、跡部は「ふん、そんなの決まってるじゃねーか」とドヤ顔で言った。

先程案外謙虚だと思ったことを訂正しなければならない。テニスに関しては強欲だ。



「忍足よりも強いんだろ、お前。だったら倒す以外に道はねえ!」



忍足……侑士君のことか。若干恨みがましく彼を見ると、侑士君は凄い勢いで土下座していた。侑士君を見ている向日は、完全に可哀想なものを見る目だ。

まあ暇だし、いいかな。



「ええよ、やろうか」



フェンスに手を掛けて、コートの中へ入る。
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