「テニス部の仮入部期間明日からやって」 四天宝寺中入学案内の冊子を捲っていた謙也くんに俺は言った。惜しくも違うクラスだったが、昼休みのお弁当は自由に何処でも食べて良いので謙也くんは俺のクラスにお弁当を持ってきた。謙也くんだってクラスで友達いるだろうに。 俺はぱくりと出汁巻卵を食んだ。流石母上、旨い。 「あー、やったら明日一応ラケット持ってくか?」 「おん、そやな」 ふと謙也くんの顔を見ると、心無しか嬉しそうにニヤニヤしている。 「何にやついてるん」 「せやかて、ようやっとテニスできるんやで! 楽しみやんか、なぁ!」 「えー? 白石くんと忍足くんってテニスするの?」 不意に、女子が話しかけてきた。清楚な感じの子で、俺が一番苦手なタイプ。 標準語で話そうとしているみたいだが、残念ながら隠しきれていない発音。 「そやで! この学校に入ったのもテニスするためやし。な、白石」 そこで俺に振るのか。 「まあ、俺はテニスするためやけど、謙也くんは俺に付いてきただけなんちゃうん?」 そう聞くと、謙也くんはぽかんと阿呆面を俺に向けた。 「そうかもしれん・・・」 |