捉えた。



「っなに!?」

「あばれ球が、返された……!」



一瞬、まるで世界がスローモーションのように映った、そんな気がした。つまるところ、あれだけ苦戦していたのが嘘のように俺は球の軌道を読んで、捉えて、打った。それだけだ。

静まり返っていた会場内が、審判のコールによって再び騒がしさを取り戻す。ゲームアンドセット、6-4。そのコールを聞いた謙也くんはしばし呆然とした後、満面喜色で妙な叫び声を上げながら俺に飛び掛ってきた。若干うるさいのは愛嬌だ。



「勝った、勝ったで!」

「せやなあ。でもこれでようやく一勝、やで」



そう言えば、謙也くんは益々テンション高く「目指せ優勝や!」と抜かすので「謙也くんの試合はもう終わったがな」と笑いながら彼の頭をぺちんと叩いた。さっきは優勝だといえばへこんでいたのに面白いくらいの変わりようだ。

でも、これでようやく一歩進めた気がする。
| |
- ナノ -