「…四月に白石を部長に据えるって言うたとき、お前がまず始めに喜んだから、コイツとうとう頭おかしくなったんかと思ったんねん」

「ま、白石がえらい優秀なんは周知の事実やさかい、そんな奴と俺を比べたらそりゃあ白石の方が将来有望なんは目に見えとるっちゅー話や。…それに、」



少なくとも、厭味を言うような人ではないのでありがたく受け取っておくが、ハラテツ先輩との試合成績はどっちもどっちの四勝四敗なのでこれは……どうなのだろう。

先輩は、一息溜めてからその続きの言葉を発した。



「白石が一番、俺よりも勝ちたがってるから部長にしたいんやってセンセ、言うてたよな」

「さあ、覚えとらんわ」

「阿呆か。…兎も角、確かにそうやって思ったんや。四天宝寺が優勝したんだって四年も前の話やで? しかも、俺やて一年の時立海の毛利に負けとる。心のどっかで無理やて思っとったとしても否定出来んわ。その点白石は、突飛な才能は無いけど努力家で、勝ちたいって本気で願っとるって分かるし」



そう語る先輩の目にあったのは確かに、勝利への渇望だった。そりゃあ言ってしまえば、四天宝寺は中高一貫だから、もし今年負けたとしても来年に持ち越せる。…それでも、負けたくないものはあるのだ。俺も先輩も皆も、今年、このメンバーで勝ちたいと本気で想っているんだから。
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