カードが配られる度に表情が一喜一憂する謙也くんは、アホっすかと財前に罵られながらも大貧民の道を突っ走っていた。そしてなんと小春は今まで三回大富豪をしたが、三回連続で大富豪だった。革命は起こりそうにも無い。俺? 平民ですが何か。

流石に三回もやるとこの濃い面子は変化を求める。飽きた、とぽつりと呟いた財前に反応するように一氏はニヤリと笑った。



「ほんなら、負けた奴はアイス奢りな!」



ホテルの一階に売店があったのを思い出して、俺もまあこの人数だったら謙也くんの財布の紐事情にも大丈夫かなぁと思い了承したのだが、多分皆、また謙也くんが大貧民になると予想していただろう。皆の考えが分かったのか彼もムキになって「今度こそ大富豪になったるわ!」と息を巻いた。だからこその提案だったと思うのだが、残念なことに四回目の大富豪で大貧民になってしまったのは俺だったのである。

皆が申し訳なさそうにしょぼんとしている中で何のアイスがいいかと聞くと、皆が皆ガリガリ君、と息をそろえて言った。そんな遠慮せんでもええのになあ。

とまあ、財布を持って売店に向かう俺だったのだが、一階のロビーで真剣そうな表情で話し合っているオサムちゃんとハラテツ先輩を見かけて、ついつい隠れつつその内容をこっそり聞いてしまったのであった。
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