「今まで努力したことないんすわ、俺」

「(え、厭味?)」



新瀬が屋上から出て行ったのを掃除用具入れの中で見守った矢先に、財前にあっという間に見つかってしまった。冗談半分で何はなしてたのかを聞くと「絶対に白石には言わないから!」と言わされたものの、財前はぽつりぽつりと話し始めた。



「でも、部長はすっごい苦労してる。俺が天才ならあの人は秀才や」

「……確かに」

「だから俺も努力してみようと思ったんです。でもどうすればいいのか分からんし、でも部長に聞いたら負けたような気がして」



あるよなーそういう意地。俺も白石に成績見せるのちょっと躊躇うしな。そう、だから財前は執拗に白石を避けてたんか。なるほど。



「しかもそれを勘違いして新瀬が絡んでくるわで」

「へー(白石、後輩にはめっちゃ好かれとるもんなぁ)」

「あの、謙也さん」



いつもなら見せないような切羽詰った顔を見せた財前は、俺の目を見て言った。



「俺と練習付き合ってくれませんか!」
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