分解してから再構築
おおきな爆発音と、急速に形作られていく氷の山はどう見ても派手だった。電柱の天辺に立ったまま賑やかなそれらを眺めていると、音を聞きつけてこっちに向かってくるマスコミのヘリが遠くに見えた。こっちの制圧が先かマスコミの到着が先か。湾岸に立地していた貸倉庫の一部はドンパチ鳴る氷の城となっていて、そこから命からがら逃げる敵たちの行く先は想像通りの東京湾。逃げようと地を蹴って海に飛び込んだその瞬間に私の出番が始まるわけだ。
「ふふん。残念でした〜」
伸ばすスピードは目指せ社長の氷!それくらいの勢いで地面を伸ばす。正確に言えば、地面に似た"鉱物を構築していく"。良いカモの敵は見事にすっ転んでるし、何かを察知した連中は増えていく足場を警戒しながら進んでく。そしてすぐに現れる壁。
「壁って乗り越えるものだと思うんだけど、個性によってはそうじゃないんだよね」
壊せばいい。そう思う奴らがいるのもわかってる。何もひるまずに突進してくのとかまんまそれだよね。ジャケットの裏に何本も差し込んであるものの中から鉄製の棒を選んで取り出した。
「
分解して組む」
私は必殺技とかわかりやすいものはない。頭がこんがらがってしまわないよう、やることをただ明確にするために口に出すだけ。手のひらの上で分子レベルにバラけたそれを空気中や海の中にある物質と紐づける。そしてそれから……
「ひとりも零してあげないんだから」
二つ目の壁をぶち壊して進もうとした敵の頭上から、大きくしたその塊を落とす。そんなこんなで先輩方に追いつかれた敵共は次々とお縄についていく。高さをあえて低くしていた所は案の定敵が集中していてごっそりまとめて捕まえられたし、壁に登れても、次の壁へと移動するのに適した個性を持っている奴はいなかったみたいで大体は2つ目の壁までの間に捕獲できた。さっき塊を落とした相手はどんな感じかしら。下に降りて敵の様子を見に行くと、同着で現れたのは爆豪先輩だった。
「お前も十分えげつねーことしてんじゃねーか」
「息はできるし焼け焦げたりはしないので」
「足の骨バキバキにしといて何言っとんだ」
「危なそうな箇所は外してますよ〜」
地面に伏したままの敵の横で、ね?と首を傾げてみると、ハァ〜とそれはもう長いため息が聞こえた。おっといけない、手が自由だ。もがいて動こうとする敵からすこしだけ距離をとった。地面に両腕くっつけとこう。どうせすぐ連行するから素材は地面からとればいい。敵が暴れるせいで芸術的な形になってしまったけれど、確保できれば問題ない。現れた警察が敵を取り囲んでいくのを見送ってから、その輪からそっと離れた。
「あ、そうだ先輩」
「んだよ」
「心配してくれてありがとうございます?」
「……さっさと戻んぞ」
ありゃ、否定されなかった。……やだなあ、嬉しくなっちゃうじゃん。