拍手ログ ハロウィンA


その体の寸法が悪戯なんじゃないのかと思いたいけど現実で信じがたくてたまらない目の前の後輩は、なんとも奇妙な恰好で警備企画課のフロアをちょこちょこ歩いていた。

「トリックオアトリートです風見さん〜」
「ほら」
「うわー情緒のない渡し方〜」
「お菓子回収に徹してるお前に情緒もくそもあるか」

カボチャのランタンを模したプラスチックのカゴを差し出す吉川の手をすり抜けて、彼女の背後にあるダンボールへと菓子の包みを投げ入れた。甘やかしすぎだろう、と思っても毎度毎度繰り広げられる光景に突っ込むのも疲れてしまった。身の丈以上に大きなダンボールに山ができそうなほどお菓子をため込む小学生女児は果たして世の中にいるのか。

「だいたいその浮かれた格好はなんだ」
「そもそもがですね、降谷さんにこのカゴに入るだけのお菓子だけって言われたんですよ」
「どうみても守ってないが??」
「だって回数制限されてな、あいたっ!風見さん今つむじ叩きましたね!」

お菓子あげるから悪戯しないで!とぷんぷん怒っている吉川はオレンジ色のスカートに黒いシャツ。髪の毛は三つ編みがふたつカボチャのモチーフがついたゴムでまとめてある。それから魔女みたいな紺色のマントを羽織っていた。

「わたしはお菓子がもらえたらそれでいいんですよっ。だけどみんなが用意するから!」
「悪戯の代わりにその恰好をしろってことか?」
「そんな感じです〜。局長なんてカボチャの着ぐるみまで持ってきたんですよ?ありえないー!とりあえず魔女の帽子とマントだけ受け取って着てますけどー」
「帽子は見あたらないぞ?」
「えっ、うそ落とした?!」
「……そのダンボールのお菓子の下敷きにでもなってるんじゃないか?」
「それめちゃくちゃめんどくさいやつじゃないですか……」

ひとまず探そう。とダンボールをごそごそ漁っている後輩のうしろ首にぶら下がっているのを見つけたけども何となく言わないでおくことにした。うん。子供の帽子ってだいたいゴムついてるしな。


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