拍手ログ お泊り


「決してお邪魔したかったわけではないですが、おっ邪魔しま〜す!」
「つまみ出すぞおい」

降谷さんが組織の仕事で1週間ほど家を空けることになった。わたしは一人で降谷さんの家でくつろいでるつもり満々だったのに心配性なあの人は何を思ったか風見さんにわたしのお守りを押し付けてた。ねえ〜〜見た目は6歳でも十分大人の女なんだからひとりで何でもできるに決まってるじゃないですかあ。そんなわたしの言い分は聞き流されてまんまとわたしは風見さんが一人寂しく暮らすお家にやってきたわけである。

「なんもない……わけでもないですね?」
「俺の家を何だと思ってたんだお前」
「ううーん。もっと雑な感じ?」
「よしわかった表へ出るんだ」
「やだやだ雨降りそうだもん今日は泊まる!」

意地悪な顔してわたしの旅行バッグを投げ捨てる真似をする風見さんに体当たりをしてバッグを奪い取る。中身は軽いけど、バッグは大きい。なんとか抱えてたそれを簡単に取り返されて、ソファの上に置かれた。

「このバッグに何入ってるんだ?大きい割に軽いが」
「ふふん、見て驚かないでくださいよ」

ソファに登って、バッグの隣りに座る。ゆっくりジッパーを下げているのを風見さんは興味深そうに眺めていた。

「じゃじゃーん!前に風見さんがくれたカメのぬいぐるみでした〜!」
「おい待て吉川。俺が買ったのはカメの座布団じゃないぞ」
「座布団だなんてひどいな風見さんてば〜。甲羅に垂れた涎を洗い流すべくお風呂に入れて乾かしたら綿が寄ってべっこべこに凹んだカメですよう」
「明らかにひどいのはお前だろうが!」

ぬいぐるみの洗濯なんて降谷さんにやってもらえ!だなんて、仮にも上司を何でも屋みたいに思ってるのかな風見さんて。まあね、たしかにね、降谷さん器用だからそういうの得意そうだけどね。そんな手先が器用な手を持ってしても、わたしがぐっちゃぐちゃに揉み洗いしたカメの甲羅の丸みを留めるのは不可能でしたー。申し訳ないけどいっそ平坦にしちゃえ〜ってことで今では座布団にしか見えない平たいカメの出来上がりです。

「まさかお前のバッグに入ってるのそのカメだけとは言わないよな」
「パンツは持って来てまーす!」
「詳細は聞いてない!!」



- 10 -


[*前] | [次#]
ページ:




- ナノ -