お好み焼き奇想曲

よこく


ノートと机に繁殖した謎の生物のせいで、したくもないジョニーの悪夢を体感した気分になったのに、英語の授業は当たることはなかった。あーあ、こんなことなら予習なんてしなきゃよかった。それから授業も終わって、面倒な掃除当番も何となくこなして帰路につく。学校の周りは住宅街に囲まれていてさびしい感じはしないけれど、愛しの我が家がある場所は周りは畑に田んぼという田舎のイメージそのまんまの風景でどことなく寂しげ。そんな田舎道をいつものように歩いて帰る。実際そこまで距離はないのにどうしてこうも一気に田舎になるんだろう。そんなことを思いながら緑に囲まれた道路を歩いた。

「ただいまーあ」
「おかえり〜。バイトは?」
「今日はおやすみ」
「そ。」

居間に行くと、お母さんが洗濯物を畳みながらドラマの再放送を見ていた。最初の方見れなかったな。先週の予告からだとキスをする流れだったけどもう終わっちゃったのかも。タイミング悪いなあ。それでも、お母さんがきちんと録画しているみたい。流石わたしの母親。よし、晩御飯の時に最初から見よう。そして、ふと居間にある大きなテーブルの上に投げ出されたそれに気付いた。普段なら気にも留めないそれ。昼間のノヤを思い出して、スマホを取り出した。


『回覧板きてたよ』


手短にメールを送り、回覧板に挟んである紙たちをざっと見た。どれも、ノヤに関係あるものじゃなさそうで、どうして奴はこんなものを見たがるんだろう。そればっかりが気になった。握っていたスマホが短く振動したので、ラインの通知が来ていた。『今からお前んちいく』既読をつけるまでもなく通知で読める短さの文に思わず首を傾げる。


「なんで?」


とりあえず制服を着替えよう。ノヤがゆっくり来ることを期待して急いで部屋へ駆け上がる。


 


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