「黄瀬ェ、おせーぞ!」
「人んち来てそれはないっスよ!」
「黄瀬くん、何か聞こえませんか…?」
「あぁ、たぶん紗希乃が練習してるんスよ」
「ここお前んちじゃん」
「この窓の向こうが紗希乃の部屋っス」
「「えっ…」」
「なんで?!なんで引いてんスか二人とも?!」
「テツ、カーテン開けろ」
「了解です」
「ちょ、ストップストップ」
「なんだよテメーは毎日見れンだろ」
「独り占めですか黄瀬くん」
「や、そうじゃなくて。邪魔しないであげてほしいんス」
「あぁ?見るだけだろ」
「家で歌ってるってことは、新曲のレコーディング前とか、他の仕事であんま歌えてない時とかだからわりとピリピリしてるんスよ」
「…」
「ダンスとかは結構毎日のようにやってるけど、歌歌ってるのっていつもじゃねーから、今日はちょっと勘弁っス」
ガラガラッ
「りょーた」
「えっ、」
「んだよ、フツーに出てくんじゃん」
「だってドタバタしてるんだもん。気づくよ。」
「ご、ごめん!ほら、二人も謝ってくださいっス!」
「あー?」
「すみませんでした。」
「へっ、なんで謝るの?」
「だって練習の邪魔をしてしまいましたし…」
「あー、へーきへーき。どうせ明日すぐレコーディングだし。早入りして練習するから大丈夫。」
「やっぱ明日レコーディングなんスね」
「ん。新しいアルバムのね。歌割りどうなるかドキドキ!涼太が好きそうなカッコイイのまたあるよ。あとね、ラップ系のもあるしー、それとね〜」
「……おい。」
「なあに、青峰」
「気楽にしろよ」
「え?」
「眉間にシワ寄ったババアの歌なんざ誰も聞かねーって言ってんだよ」
「ちょ、青峰っちぃぃぃぃ!?」
「いつもみてーにへらへら笑った方がイイ歌に聞こえるって言ってんだよ」
「…」
「うわ、もう、だからそっとしといてって言ったじゃないっスかあああ!」
「はははは!確かに!」
「えっ、紗希乃…?」
「歌割りもらえないかもって思ってピリピリしすぎてたね、わたし。そりゃそーだ、眉間にシワ寄せたやつの歌なんて聞きたくないよね。」
「おう。」
「紗希乃さんなら大丈夫ですよ。僕らが保証します。」
「はは。キセキの世代に保障されたら確実だね!ありがとみんな。気使わせててごめんね涼太。」
「ぜんぜんっス!」
「そ?ならいいけど!」
「軽っ!」
「ふふっ」