5000Hit記念@




私はマクシミリアン王に2回だけ会ったことがある。

アルファンがルーベンスに負けた時と












5歳の時に……。








【白薔薇を貴方に】


「お父様、ここがお城ですか?」

外に行く時はいつも着るようにいわれているマントのフードを深く被ったまま、父に手を引かれていた。
暗く寂しい廊下を歩いていく。

「そうだよ、アルファン城だ。」

初めてきたアルファン城は大きくて、でもどこか寂しい城だった。
(お城ってシンデレラ城のイメージしかないけど、この城はなんだか暗いなぁ。)
日本人であったシュラはお城というものには華やかなイメージを持っていたのだ。


「ここだよ。」
「あ!」
暗く寂しい廊下を進み、奥の部屋のドアを父が開けた。

そこには……


「光が……。」
大きな窓からアルファンの控えめな太陽の光が柔らかくさしている。
真っ白な壁が光を反射して、部屋中がとても明るい。
むかって右側には金の螺旋階段があり、その階段をのぼればロフトのような場所に本棚が並んでいる。
左側には白い勉強机、その横にも金と白の応接セット。
奥の部屋には寝室や浴室があるらしい。

随分、広い部屋だ。
でもそれ以上に。


(優しい部屋……。)
白と金が貴重なこの部屋は華美だが、優しい雰囲気が漂っていた。
そして先ほどまで歩いていた暗い廊下とは正反対だ。
(同じ城の中とは思えない……。でも何かたりない。)


何かたりない。
どこか寂しい。


こんなに優しい部屋なのにどこか寂しいのはなぜだろう……。

「ここは…?」
「ここは王子だった私が暮らしていた部屋だよ。」


思わず父を見上げて何が足りないのかが分かった。

「この部屋はお父様のための部屋ですね。」

父がいて完成される部屋。

柔らかな光は父のプラチナブロンドを一層、輝かせる。
そして白と光しかないこの部屋で輝く唯一の色。


鮮やかな緑。


それを見た瞬間、言わずにはいられなかったのだ。

私の言葉に父は驚いた様な顔をした。
「…そうだね、私のために作られた部屋だ……。」

父はあの時、切なそうな顔をしていたように思う。





『ここで待っていなさい。』
マントを脱がされながら、そう言われた。

ソファーに座って本でも読んでいるといいと言われたが、どうでもよかった。部屋を出る前に父が見つめていた窓の向こうが気になっていたのだ。

(この先に何が?)
思わず窓に手をついてしまった。

すると……


ゆっくりと窓が開いた。
下を見れば白い飛び石が奥まで続いている。

(この先を見ていたのかな?)
父の遠くを見つめる姿を思い出し、シュラは足をおろした。

雑草が茂っている。
進めば進むほど雑草が多くなり、大人の背のたけほどの草を必死にかけわけて進む。



暫く歩いていると、急に道が開けた。




雑草は一部だけ丸く綺麗に刈り取られていた。まるで、そこだけ緑の絨毯のようだ。

その真ん中にはベンチが置かれている。そしてそのベンチにこちらを背に男が座っていた。

真ん中ではなく右側に座る黒髪の男。
空いている左側に寂しさを感じる。


「あ……」
思わず声をだしてしまった。
静かなこの空間で響いた声に気付いたのだろう。

男が振り返った。



(あ……れ…?)


先ほどまで見ていた緑。
同じ緑。
全く同じ輝き。




「そうか…お前が……。」

男は覇気のない声で呟いた。






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