○アイス六本キス三つ
【花井と田島の場合】
花井がアイスを舐めていた。
ガラス一枚隔てた外は34度の真夏日でも部屋は空調が程好く効いて、花井はアイスを舐めながら雑誌のページをめくる。
その隣でオレはじーっと花井を見ていた。
見ている雑誌はファッション誌、舐めているアイスは、中がいちごのかき氷で、周りをミルクでコーティングしてあるやつだ。
花井の薄い唇が上下で二枚、アイスを挟むと先っぽをその薄っぺらな舌で舐める。
びんぼう性なんだかそうやってちょっとずつ食べてくから、アイスはもう汗だくになっていた。ミルクと溶けた水滴が落ちそうになるのを、花井は吸って食い止める。
オレはもう堪らなくなっていた。
何でこんなに、花井はヤラシイ食べ方をするんだろう。見ていたら無性にそんなふうに舐めてみたくなって、オレは花井の手をつかんでアイスをオレのほうに向ける。
「ん、ふ。」
「………、」
「ぷは。んん…。」
唇で挟んで、舐めて、吸って、舌でもてあそぶ。
なるだけ花井を真似てアイスをねぶり、唇を放すと、無意識に少し閉じていた視界の隅に花井が見えた。
へんな気分だ。何を言うのかドキドキしながら言葉を待つ。
「こうすんだよ。」
「あ。」
微かにそう呟くのが聞こえて、すぐに花井の唇で口を塞がれた。
花井の舌も唇も薄っぺらなくせに大きくて、それに誘われちゃオレの舌なんか言うこと聞くしかない。差し出すオレの舌をアイス舐めるみたいにされて、体の芯が震えてだんだん熱くなる。
しばらく遊んでから舌を引っ込ませると、花井は離れる前に軽く音たててキスをした。
右手のアイスはもうどろどろ。
溶けて溶けて指を伝う薄ピンクのそれを見て、花井は言った。
「ん、練習。」
言うが早いか甘い指先を突き出されて、それに舌を這わす。
花井の長くてカッコイイ大人っぽい指。口に含んだら舌の真ん中を指の腹で撫でられた。
じょうずに出来たら、何かごほうびがあるだろうか。
ちょっと期待する事にして、オレはいちごミルクの指を舐めた。
―― Be Well.
えろ花井。