365 | ナノ

Category:浜田と泉
2013 12th Jan.

★365(1<365>+1<365>)

社会人と大学生



 トイレにカレンダーというのはどの家庭にもある風景だと泉は思う。
 それは泉が住んでいる部屋も例外でなく、ペーパーホルダーの上に先月百均で買ったカレンダーが下がっている。
 大体なぜトイレにカレンダーなのかわからないが、たぶん、ぼーっとしているくらいなら予定の確認でもしたほうがいいとかそういう事なのだろう。
 カレンダーに予定を書き込むか書き込まないかはデザインや好みの問題だろうが、現在泉の隣にあるものは前者のほうだ。
 数字が入る四角い枠の中に、何の祝日だとかが赤青黒の小さな文字で書かれているくらいのシンプルなもの。その横にはどこぞの粗品らしいボールペンがぶら下がっていて、個人的な予定が汚い字で書いてあった。

 日付が一番近いものでは明後日の欄に「成人式」とある。
 明後日、十四日のそれに出席するのは泉だが、泉が自分で書いたわけではない。
 これを書いた人物は一年前に成人式を済ませている。しかし泉の予定を把握している彼が勝手に書き込んだのだ。

 まるで自分の事の様に。
 そういえば、と手洗いを後にした泉は、部屋へ向かう途中に立つ冷蔵庫のドアに貼られた、〆日を暦の末とするシフト表を見る。
 明日は早番、遅番、そうして休み。冷凍室からアイスを二つ出す時にそれをちらりと見て、オレだってあいつの予定くらい把握してる、と思った。
 

「ん、おかえりー。」

「ほらよ。」


 おかえり、と手洗いに立っただけなのに大袈裟な事を言われながら、頼まれていたアイスのカップとスプーンを渡す。
 冬の寒い時期に暖かい部屋で食べるアイスはうまい。それは世間様も同じようで冬季のアイスの売れ行きは良いらしいが、好まれるのはバニラやチョコレートで泉の好きなガリガリ系は少数らしい。
 透明な袋をゴミ箱に放ってソーダ味のバーをくわえる。やっぱりこたつでアイスは良い。


「アイスもーあと一個しかねェ。」

「こないだ買ったばっかじゃん!泉食い過ぎなんだよ。」

「だから責任とって明日買いに行くから金くれ。」

「明日っておまえ、一旦実家帰ってスーツ持って来る予定だろ。」

 
 スプーンにバニラとフルーツを乗せたひとくちが舌足らずにするその一言に、泉はテレビから目を彼に向ける。
 自分と彼との明日の共有。たったそれだけだけれど、それに気付いた泉は嬉しくなった。
 小さな枠を埋めた予定は積み重なり、やがて二人で過ごした日々は確かな思い出になってゆく。

 まずは明日をどんな日にしようか。
 考え事に夢中になってアイスを落としたら、こたつの中で蹴られてしまった。
 こんな小さな事で良い。作りたいのは、楽しい事でいっぱいの二人だけのカレンダー。


ーー make a(1+1) wonderful calendar!!



一年365題 より
1/12「カレンダー」


 
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