365 | ナノ

Category:花井と田島
2013 13th Sep.

○ 撫でて触れて、かまって愛して。

【高校生と高校生】



そのきれいな指先でさ、
ページなんかめくるんじゃなくて
オレをかまってよ。



―― 撫でて触れて、かまって愛して。



 ベッドの上をごろごろごろごろ、転がってみる。最近干したらしいふかふかの布団は気持ちがよくて、顔を埋めるようにしてみれば、いつでも夢の中へ行けるようだ。

 けれど、せっかく好きなひとと二人っきりでいるというのに、そんな勿体ない事なんか出来やしない。
 とろけてくる瞼を無理くり押し上げて、オレは前を見る。だのに目の前の奴は、雑誌をめくるのに夢中でオレの事なんか見ちゃいなかった。

 なんだ、こいつはオレと同じようには思わないのか?


「はない」

「ん、」

「かまって。」

「んー…。」

「…、かまってかまってかまって、かまえよー!」

 
 ぎゃんぎゃん、とわめいてみる。
 と、花井の目がオレに向く。
 が。その目は面倒くさそォーな色だった。


「はいはい。」

「ダメーもっとちゃんと!」

「じゃあわかったよ、ハイここ来いよ。」


 部屋の隅にあるベッドにオレは転がり、花井は壁に背を預けて座っている。
 その腰の辺りでもぞもぞしていたからか、オレがかまえと訴えても、花井は手を伸ばし髪をぐちゃぐちゃに撫でてくれるしかしなかった。

 そんなんじゃあ満たされない。再び声を上げると、ため息をついた花井はその足の間の布団を叩いた。
 ここに来いと言うのだ。それなら良いとオレはいそいそそちらへ向かう。
 花井の長い脚へ挟まるようにしてそこへ収まり、オレはじっと花井を見つめた。


「……なんだよ、」

「へへへー。いーよ、雑誌読んでろよ。」


 花井の顔が近くに見える。肌がきれいで、睫毛が長くて、結構整ってる花井の顔がオレは好きなのだ。
 オレの肌なんかそばかすが浮いてるし、色は日焼けてるし、別にきれいな顔じゃない。
 だから花井のを見ると、ついまじまじ見てしまうのだ。たぶん、元々こういう顔が好きなんだろうなと思う。

 中でも気に入ってるのが唇だ。口は大きいわりに唇が薄く、ストイックな感じがして好き。
 じっと見てたら触りたくなって、指で触ったら今度はキスしたくなってしまった。


「はない、なあ、キスしよ。」

「もー、……落ち着け、ちょっとは!」


 ごそごそごそごそ、布団の上から腕の中、そうしてまだおねだりをするオレに、花井は辟易してるって顔をした。
 でも花井は結局オレの好きにさせてくれるのだ。腕の中でちょっと上目遣いに見てやれば、仕方ないなあといったふうに花井からもキスしてくれる。

 オレはかまってちゃんなんじゃないよ。
 ほらこのとおり、花井をかまいたいだけだから。

 減らず口を叩いたら、花井に思いっきり眉をひそめられてしまった。


―― touch me, hug me,and kiss me!


一年365題より
9/13「面倒なんて言わないで」
眠気に負けていみふめい



 
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