Category:花井と田島
2013 26th Aug.
○ いただきます
【高校生と高校生】
「やめろよ、暑いんだから、」
「暑いなら下げりゃいいじゃん。」
細い背中に擦り付くと、花井は暑いと嫌がった。
先程勝手に音を弱めたエアコンによれば、室温は二十八度。衣類を通して重なる部分がどちらのものかわからない熱で汗ばんでゆく。
だからオレは彼からリモコンを掠め取った。世間様への彼の気遣いを五度下げる。
「だから、やめろって……節電ッ!」
「なんでそんなムキになんだよォ。」
「おまえこそ、後の事考えてリモコン押せ!」
「ナニ?」
「地球温暖化ぐらい知ってんだろ。それが進めば、何十年か後は今よりずっとおかしい気候になるわけじゃん。今出来る事して、ちょっとでもキレイな世界残したいの、オレは。」
二酸化炭素は吐き出され続ける。地球は窒息寸前だ。
地球が出来ない呼吸をオレたちがいつまで続けられるんだろう。その罰を受けるのはまだ生まれない、彼がすてきなプレゼントを贈ろうとしている人たち。
「キレイな世界、『誰』の為に残すんだよ。」
「誰、って、」
「そんなのいない。少なくとも、『オレたち』にはね。」
リモコンを部屋の隅に投げ捨てて、オレは現実を甘くその耳に溶かしてやった。
彼の切なる告白を最も受けるべき人間は、彼がオレを捨てない限りはこの世に生すら受ける事はない。
オレが離してしまえば、花井は人並みに幸せになれるだろう。けれど喉首に絡みつけた腕をオレがほどく事はきっとない。一番罪深いのはオレだ。
「だからさ、おれたちは今シタイコトしようぜ。」
「…くっつくなよ、熱い…」
「温度、まだ下げる?」
首筋に唇を落として肌をなぞる。黙ってしまった唇には同じものを重ねてやって、オレは口の端を上げた。
オレたちには、オレたちしかいない。
でもそれはきっとすてきな事の筈だ、自分たちの事しか考えなくていいんだから。後の事なんて考えなくていいんだから。
キスしてあげる。そうしてオレは、彼と未来とこの星を食べ尽くす。
―― There is NO future.
一年365題より
8/26「制御し難い感情」
二年前の九月に書いたそうです。(ログから持ってきた)
わけわかんないですね。わたしもです。
田島さまがこあくまならそれで満足です。
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