Category:花井と田島
2013 3rd Aug.
○ 嘘つきに飲ませる甘い毒
【同級生が好きな高校生】
あ、という声と同時に自販機からアイスが転がり落ちる音がする。
それらにつられ振り向くと、夜に皓皓と光る自販機のパネルが目を刺激した。
「間違えた。隣のレアチーズ押しちまった。」
そうこぼして花井は今ほど買ったアイスを持って、駐輪場の柵に腰を下ろすオレのところへ戻って来た。
二十時近くのレンタルショップの外で、オレと花井はアイスを食べる。
昼間の熱を未だに宿すアスファルトのせいで、こんな時間になってもまだ空気は少し熱を持つ。適当にCDなんか借りて、その暑さの為にアイスを手にしての帰り道だ。
ほんとうはイチゴが良かったんだと言って、花井は甘いアイスを食べる。
店から遠ざかるほどに、夜は色を落としてゆく。
「花井。」
「ん?」
「それくれよ。オレも食べたい。」
時折車道を車が走るだけの夜の底。
それなら何したっていいだろう。オレの言葉に、花井はよく考えもせずに本来望まなかったアイスを向ける。
その手をつかんで足も止める。そうしてオレが食べたのは、つま先立ちの距離にある彼の甘たるい唇だった。
ほんの一瞬重ねて、離れながら真っ直ぐ花井の顔を見る。驚いたような顔をして、彼は手の甲で唇を隠した。
「おま、ちが、なに、」
「間違えた。こっちのがうまそうだったからさ。」
彼はあわてふためく振りをする。頭の良い彼は身を守るのが得意だ。自分を守るのが得意だ。
けれどオレはそれを剥ぎ取りたい。オレが報われるには、こうしなければならないのだ。
「いい加減気付けよ、花井。」
やがてオレから外れる視線に、オレも瞼を伏せてしまう。
オレが彼を思う気持ちは友情と羨望のそれを超え、彼に触れたい気持ちにまで育っている。
でも、気づいて欲しいのはそれじゃない。同じ感情を抱いているくせに、知らない振りをしている彼自身にだ。
この瞼を再び上げたら、世界は変わってくれるだろうか。
祈るように俯いて、オレは再び彼を見る。
―― mistakes, will be wellbeing.
一年365題より
8/3「間違えた。」
おもしろくない話ですね。
最後の英語もよくわからない。
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