オルオが初めてクラバットを巻いてきた時、リヴァイは別に気にも止めなかった。寒さ対策とか気分転換とかその程度だろうと思っていたのだ。
が、どうやら自分のマネをしているらしい、しかも同期や後輩への口調も含めて…となると、さすがに少し驚いた。
ー何故俺にー
確かにオルオは初陣こそ散々だったが、その後も生き延びて結果を残し、若手の中でも1、2を争う実力を身に付けていた。
その彼が、似てはいないが、憧れ、尊敬しているリヴァイのマネをして、その姿・口調に恥じぬよう努力を重ねてきたのだという周りの評価は分かるし、どうこう言うつもりも無いが…
ー本当にそれだけか?ー
そう思うようになったのも…
「まだ兵長のマネをしてるつもりなの? ホントに止めてよね!」
「はっ…ペトラよ、お前には分からないだろうが…」
「分かりたくもないわよ!」
端から見れば無害なやり取りに、リヴァイの心が波立つようになったからだ。
オルオがリヴァイのマネをしだしてから、ペトラがオルオに突っかかって行くことが多くなり、必然的に言葉を交わすことが多くなり、物理的な距離さえ近くなっていく。
オルオがそこまで狙っているのかは分からないが、そうなっている現実はある。
今はただ怒り呆れているだけのペトラだが、マネに隠されたオルオの彼女への想いに気付いたとしたら…。
人の心がどう動くか予想もつかない。
部下の一人だと思っていたペトラをいつの間にか手放し難く想うようになったリヴァイ自身が良い例だ。
つまりオルオが自分のマネをするのが嫌なのではなく、それによってあの二人が近付くことを恐れている自分が嫌なのだ。
そこまで考えてリヴァイは、彼にしては珍しく、長い息を吐いた。
いつもは全く気にならない前髪を鬱陶しそうにかきあげ、とりあえず言い争いは終わった雰囲気の二人を見やった。
そう、ただ眺めるだけしか出来ない。平時においては殆ど変わることのない、この仏頂面で。
そんな自分すら嫌になって、リヴァイは二人から視線を逸らすと、その場から離れた。
ペトラへの想いと向き合うことから逃げるように。
そんな自分から逃げるように。
[end]
140字の方がキレが良かったなぁと思いつつも、グダグダへいちょに変わりはないということで(^^;)