「れい…!」
終わり、さよならと決めてた気持ち。けれど目に映ったのは呟いた貴方で。こんなに必死な姿のガゼル様は見たことがなかったいつも冷静沈着で、なによりの疑問は、何故、此処に居るの?
幻かと思い近寄ってくるガゼル様を見ながら目を擦ると抱き締められた。温かい、ガゼル様の体温が冷たいと思っていたのに温かくて安心する。
「逃げるぞ」
そう言われ、手首を引かれた時、頭が物凄い痛み、衝撃が走る。
ガクンと膝を着いてしまう。
ガゼル様は知っているのか私を両腕で抱えた瞬時、部屋のドアが誰も居ないのに閉まる。密室の状態にお父様と黒服の男、白衣の人達が私達を壁を後ろにして囲んだ
「ガゼル…れいを連れて何処に逃げるのですか?」
「お父様……!」
「貴方も排除されたいのですか?残念です、君を本当の子のように接してきたのですがね」
「っ、お父様!れいを……」
ガゼル様が言いかけようとした時に私は力一杯にガゼル様を押す。その衝動にガゼル様は床に私を落とした。立ち上がり、ガゼル様に背を向ける。
『お父様、ガゼル様は悪くありません、私を排除して下さい。それが目的なのですよね』
「……そうですね。では、やりなさい。」
これでいい。どうせ、私は此処で逃げても近いうちに壊れてしまうのだから。
そう思っていても涙が止まらない、溢れて、白い床に同色する雫。
なんて諦めが悪いのだろう
ガゼル様の方へ振り向き、
動こうとするが黒服の男に拘束された。痛くて堪らない。見たくない、だけど言わないと、さよならって。
『ガゼル様…貴方が助けてくれた子猫、シランは私の大好きな花の名前です。大好きな、大好きな、唯一の記憶の中から出てきた花でした』
私は目が醒めた時の記憶はこの花が好き、としか頭になくて…残っていたのは何故だかしらないけれど
大切で、大切で。
愛しく、優雅な姿を貴方にそれを重ねて。
『シランの花言葉は…貴方を忘れない、私はガゼル様を愛してます』
止めたい涙が止まらなく必死に堪えた嗚咽までもが容姿に溢れた。
『いな、くなりたく…ない!
ガゼル……と居、たいっ…』
頭が痛みからぼんやりとしてきた、さよならの合図。お父様の声が聞こえて、私に細い剣が腹部に貫通する。
ガゼル様の私の名を叫ぶ声が
小さく聞こえた。
祈りは願いとなって冷たい空気と中和して、きみとはなれた冬。
だいすきでした。
最愛
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