渇望
いつまでも一緒に居れるとは思はなかった。でもいつまでも一緒に居たいと思っていた。勿論花井だってそう思ってるって信じてた
「別れよう」
こんな時花井なら気まずそうに言うんだろう。でも目の前に居る花井は満面の笑みで言うんだ
「俺、結婚するんだ。会社の同僚でさ!田島にも今度紹介するよ」
なんでそんなにあっさりしているのだろう。俺たち高校の時から付き合ってるんだぞ?直ぐに切れる様な仲だったか?嫌だ、そんなの嫌だ、そう思うのに口が勝手に動く
「そっか、楽しみにしてる」
思っても居ないのに口が動くんだ、どうして?なんでなの?意味がわからない
「式には呼べよな」
止まれよこの口、潰してやろうか。こんな自由の効かない口なんていらない。こんな変な空間なんていらない。俺を好きじゃない花井なんていらない。
(…じ……ま…ろ!たじ…)
「田島起きろ!」
「はな…い?」
「大丈夫か?お前、うなされてたぞ」
いつもの花井だ。夢で見た大人ではなく高校生の花井。正真正銘本物の花井。抱きついて感触を確かめる、ここに花井が居る。
「離れないで、ずっと一緒に居たい」
「どうした田島、怖い夢でもみたか?一緒に居るだろーが、なっ?」
「好き、花井」
怖いのは夢じゃない。俺の醜い感情だ。お願い離さないで、ずっと一緒に居て。じゃないと……
俺どうするかわからないから
[ 1/15 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]