定義


秋空を楽しむとは、聞いたことがあるが冬空を楽しむとはあまり聞かない。それはなぜか、答えは明白だ。秋には紅葉が綺麗だがその紅葉も冬にはなくなっている。だから寒い中、窓を開けたり外に出てまで見る価値が冬の空にはないのだ。ならなんで価値のないことをわざわざ楽しむ必要があるのだろう。


「シンジくん。生きているものと死んでいるものの違いがわかるかい?」


渚が僕を呼び出して初めてかけた言葉。こんなしょうもない話を、わざわざ外でする必要があるのか


「……室内じゃ駄目なの?僕、寒いんだけど」
「外じゃなきゃ駄目なんだよ。ほら…冬空って寂しいかんじが、死と似ているだろ?」


寒くて、冷たくて、寂しい。それが渚の死のイメージらしい。だから外で考えたいみたいだ。よく分かんないうえに迷惑である。


「その理屈ならば、生きているものは暖かくて、満たされているものなんじゃない?」
「でも、それじゃあ植物が生きている理由が説明出来ない」


どこか一点を見つめ、お得意の口元だけを歪める笑みを浮かべそう言う。


「じゃあ、生きる理由があるからだよ。植物なら、太陽を浴びて、花を咲かせるためとか」
「なるほど。なかなか面白くて、理に叶っている。じゃあ、僕は生きていると思うかい?」


視線を今度は僕に向け、浮かべていた笑みを消した。2つの瞳が僕を捕らえる。その瞳を冷めた目でみつめ返した。


「わからないよ。君のことじゃないか。僕がわかるはずがない」
「じゃあ、質問を代えるよ。君が生きる理由に僕は少しでも入っているかい?」


表情はそのままで、しかし、寂しげに言う。冗談で返してはならないような雰囲気が漂っていた。寂しそうな渚の今の状態は渚の定義上『死』んでいる。そんな渚に冷たい言葉なんて出せない。いや…もしそうでなくても……僕は『NO』と言えないだろう


「僕のなかで、君は大きな存在だよ。嫌いという意味であるならね」
「そうか……それでも…そこに、君の中に、僕が居るなら、僕は生き続けれる」


満足したように、はたまた、安心したように言う渚は、僕の知る渚ではなかった。















「いつかは、好意を持って僕を存在させてくれると嬉しいんだけど」
「なにか言った?」
「いいや、なんでも」



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