「みこと…だから邪魔しないで」

大丈夫だから。
私がそういうと、みことは私をジッと見た。
そして、目を閉じて一歩下がる。
それを合図に、私はいずもに掴みかかって
その場に組み敷いた。

「「草薙さん!!」」
「…なんや、魅力的な構図やけども」
「…遺言がそれでいいの??」

そら困るわ、といずもは笑う。
…なんで笑うの。
私は本気だよ。

「…本気で俺を殺すん??」
「…殺すよ」

左手はいずもの顔の横に、右手には赤を纏って振り上げる。
殺らなきゃ殺られる。
お互いまさにそんな無防備な状態。

「…なんで、動かないのいずも。死んじゃうよ」
「めいがそないな顔しとるから」
「そんな顔って…」

どんなと言いかけた時、いずものほっぺにパタタッと水滴が落ちた。
いずもが私に手を伸ばして、目元とぽっぺをぐいっと拭う。

「…めいこそ、なんで動かん??もし俺がこのまま…」
「私はそれを望んでるから」

いずもの言葉をさえぎって、私は言葉を発する。
いずもの言いたいことはわかる。
…いずもを殺すにしては私は無防備すぎるんだ。

「ねぇ、いずも。私ね、吠舞羅のメンバーが増えて賑やかになるの、嬉しい」
「…せやな」
「でもね、嬉しいのと同じくらい苦しい。大切なものが増えてくと同時に、
私の弱みも増えてく。だんだんと、首を絞められてくみたい。
…私、いつからこんなに弱くなっちゃったんだろう」

私、人よりも強いと思ってた。
守れると思ってたのに、守られてばかりで。

「さるひこだって。吠舞羅の仲間じゃなくなったけど、私は大切だもん。
初めてできた友達なんだもん。…エリックとさるひこを引き合いに出されたら、
私は逆らえない」

だから私は青についたの。
クランズマンにはならないことを絶対条件として。

「…脅されたっちゅうわけか」
「…もういやだよ。わかんないよ。…なんでこうなっちゃったの…??
私はただ…いずもの役に立ちたかっただけなのに。いずものそばにいて、みことやたたらと一緒に…笑ってるいずもが見たかっただけなのに」

色んなものに縛られて、私もう動けないんだよ。

「いずも……助けて…」

私が消え入りそうな声でそういうと、
ほっぺに触れてたいずもの手が後頭部に回って、ぐいっと引き寄せられた。
引っ張られるままにバランスを崩して、いずもの方に倒れこむ。
軽く触れる私の唇といずもの唇。

「…なんでそないなるまで俺らに言わないん??俺は殺すためにお前をここまで育てたんとちゃう」
「…ごめん、なさい」

私がそういうと、いずもは私を抱きかかえたまま上半身を起こして、
しっかりと抱きしめ直した。

「めい、俺はな。お前が成長すんのを見てんのが楽しいんや」
「…うん」
「でもな、お前は小さいころから苦労してるんもあって、年よりも大分大人や」
「…そんなこと」
「いや、ホンマはそうなんやと思う。だから、こうやって、年相応なとこ見れんのは…嬉しい」

だからな、と今度はいずもが消え入りそうな声で言う。

「あんまはよ成長せんといて。…俺の傍におって。…頼むから…」

その言葉を聞いて、私はいずもに強く抱きついた。


いずも、
私はあなたに出会えて本当に幸せだ。
…大好き。


…いつのまにか、
空から白い粉が降り始めてた。
出会ったころのように。

すべての始まりの夜のように。


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